ハイパーサーミア(温熱療法)
について

ハイパーサーミア(温熱療法)は腫瘍細胞が正常細胞よりも熱に弱く、一定以上の温度で優位に死滅する性質を利用した治療です。しかし、腫瘍にダメージを与えるだけの温度を一定時間保つことは技術的に困難であり、ハイパーサーミア単独で狙って腫瘍を縮小させることは難しいのが現状です。
一方で体内温度が1度でも上昇すると、生体の動きが大きく変わります。動脈や静脈の動き、酵素の働き、熱耐性タンパク(Heat Shock Protein HSP)の放出や免疫細胞の活性化、抗ストレスホルモンの放出など、経時的に変化が起きます。
これらの変化が抗がん剤や放射線治療の効果を高めます。ハイパーサーミアは、抗がん剤や放射線治療・免疫療法などの効果を高める重要なアシスタントと位置付けて治療を行います。
当クリニックのハイパーサーミアは、電磁波による加温装置であるサーモトロンRF8を使用します。RF8は電磁波により生体の内部から温めます(内部加温)。電磁波で水を振動させ、その摩擦熱で温度を上げます。
通常の温浴などの加温は外から温めていきます。外部加温でも生体内の変化を誘発することができますが、電磁波による内部加温は、比較的短時間で多くの生体内の変化を誘発することができます。その影響は加温時だけでなく、24時間以上に及びます。
ハイパーサーミアは、多くの場合、抗がん剤や放射線治療・免疫療法など他の治療と併用して行います。体を温めることでの温浴と同じような効果もあり、疼痛の軽減や全身倦怠感の軽減など緩和目的で単独で使うこともあります。 腰痛や冷え症など、がん以外の症状にも効果が期待できます。

治療時間

生体の変化は体の内部で温度が上がると生じます。この変化は15分程度で起きます。温度上昇による様々な体内の変化を起こすことが目的のため、最短で20分行います。
他の治療と併用した場合、加温は併用する治療に合わせます。
加温回数は週1回から月1-2回程度です。症状や治療により変わります。
温度による体の変化は、より高温で長時間になるほど大きくなります。

副作用

RF8による加温では、抗がん剤で起きるような重篤で致命的な副作用はまずありませんが、加温により次のようなことが起きる場合があります。

  • 加温部の発赤 軽度の火傷をおこすことがあります。
  • 加温中の痛み 加温中の痛みは加温後に加温部分に皮下脂肪が溶けて再度固まった脂肪が変性し、腫瘤を作って、痛みが出ることがあります。
  • 手術直後は、痛みが強く出ることが多く、少し間を開けて始めます。
    加温中の苦痛が強ければ、担当の技師にお伝えください。器械の調節を行います。
  • 加温翌日にも痛みが続くことがあります。

ハイパーサーミアについては、日本ハイパーサーミア学会のホームページをご参照ください。
温度や電磁波による生体・細胞への影響は不明な事も多く、今後大きな発展をする治療でもあると考えています。